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金持ち父さん 貧乏父さん  ロバート・キヨサキ

 

金持ち父さん貧乏父さん
ロバート キヨサキ シャロン・レクター(公認会計士)
筑摩書房
売り上げランキング: 81

 

アマゾンでこの本の書評を見ると、驚くほど評価が賛否両論に二分している。高く評価している人々は、筆者のキヨサキ氏が主張しているファイナンシャル・インテリジェンス(お金を稼ぎ、本当の資産を作るための知識)の重要性に共鳴しているようだが、評価していない人々は、その拝金主義的な価値観を蔑み、危険視する論調が多い。両方の見方ともに、妥当性があるように感じた。

思うに、この本には正しい読み方というものがあるようだ。この本の冒頭には、狂言回し的に登場する主人公の「少年」が、二人の父親のうちの「金持ち父さん」に、不条理なタダ働きを強いられ、金銭的に搾取される過程を通して、お金を稼ぐことの本当の意味を学んでいく場面が出てくる。

金持ち父さんは、教師が学校で教えるように、少年にお金を稼ぐことの意味を優しく教えてあげても良かったのだが、意図的に大人の上司が部下に仕事を叩きこむような少し不条理な方法を選択した。その方が教えが体に叩き込まれることを知って、相手が子どもでも、あえてそうしたのだった。

実は、この本の読み方も同様で、学校で先生に教えてもらうように「子どもの読み方」をしては、本質が伝わらないような仕掛けがしてあるようだ。

拝金主義的な記述や、眉唾もののエピソードも満載なのだが、そういうところを上手にスルーして、自分にとって大事な部分だけ要領よく抜き取る「大人の読み方」が求められているようだ。そういう意味で、本書は絵本のような装丁をしているが、大人のための本という感じがする。

本書で最も印象的な部分は、筆者が展開する資産と負債に関する独自の持論だ。筆者は、「資産は自分のポケットにお金を入れてくれるもの、負債はポケットからお金を持っていくもの」と定義し、住宅ローンでお金が出ていく持ち家は負債で、他人に貸しているマンションの部屋は資産に当たると説く。

この資産と負債の論点は、他にもいろいろな事例を出して様々な説明が展開されており、ここは筆者の最も伝えたいポイントの一つなのではないかと思った。

 

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官僚に学ぶ仕事術 ~最小のインプットで最良のアウトプットを実現する霞が関流テクニック  久保田 崇


著者は、内閣府のキャリア官僚。官僚というと、世間的に悪いイメージがあると思うが、実際には真面目で良心的な人が多いのではないだろうか。

自分は数年前、霞が関のキャリア官僚の人たちと共に働く機会があったのだが、その時の印象は、彼らが非常に勤勉だということ(長時間、集中して働いている)、常に話の核心に達するスピードが速い(≒地頭が良い)という印象を持った。読後感として、この本の著者も、そんな一人なのではないかと感じた。

本書にも書かれていることだが、官僚の仕事では、文書作成に関する仕事の比重が極めて高い。それも、率直に言ってあまり専門知識のない政治家などを相手に、いかに短時間で正確に事実を把握させるかといった目的を持った文書を作る機会が多いので、とにかくコンパクトで分かりやすい文書を書くことが要求される。

私の個人的印象でも、官僚の書いた文章は、政治的なバイアスが入っているものもあるが、総じて非常に分かりやすいものが多い気がする(今では、相当量の文書が役所のサイトにもアップされていますね)。はっきり言って、大半の企業の文書よりも質が高く、分かりやすいものが多い。

本書では、こうした分かりやすい文書を作る際のインプットとアウトプットのコツのほか、常に圧倒的な仕事量に追われる霞ヶ関官僚ならではの業務管理の具体的なアイディアも紹介されており、一般のビジネスマンにとっても役に立つ内容になっている。

 

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1億稼ぐ「検索キーワード」の見つけ方  滝井秀典

1億稼ぐ「検索キーワード」の見つけ方 (PHP文庫)
滝井 秀典
PHP研究所
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仕事で自社サイトの運用に関係しているので、こういう本はよく読む。アマゾンの書評では、賛否両論割れているが、この本で指摘されているエッセンス自体は、非常に役に立つ。

サイトで商売をする場合、多くの人が検索する需要が莫大な汎用キーワード(たとえば、「ダイエット」)を、検索やキーワード広告で上位表示させたければ、費用も莫大になるので、こうしたキーワードには大手企業しか参入できない。

しかし、少ない人しか検索しなくても、それに対する需要が大きい(購入意欲が強い)具体性のあるキーワードの場合(たとえば、「白湯ダイエット」)、上位表示させても費用は少なくても済み、個人でも短期間で巨額の利益を上げることができる。

単純化すると、検索エンジンにおけるキーワードの価値というのは、大体こんな感じで決まってくるのだが、本書はこうしたキーワードの費用対効果の基本的な考え方を教えてくれる。

そして、もっと単純化して言うと、現代社会では個々のキーワードには値段が付いている。そして、そこには純利益の高いものも低いものものあるし、さらに言えば、この価格は需給関係を反映した変動相場制で決まる。本書は、こうしたポイントを易しい事例を引いて教えてくれている。

書評では、言葉遣いに品がないとか、いろいろ書かれてしまっているが、本書のエッセンスは非常に役に立つ。文庫本だから、お買い得だ。

 

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小飼弾の「仕組み」進化論  小飼弾

小飼弾の 「仕組み」進化論
小飼 弾
日本実業出版社
売り上げランキング: 3068


ライブドアの前身、オン・ザ・エッジのCTO(最高技術責任者)だった小飼弾さんの著作。

グーグルでは、従業員に労働時間の80%は既存の仕事をしてもよいが、残りの20%は既存の仕事を変革する「仕組み」作りの仕事に回せと命じている。小飼氏は、これと逆に、80%を新たな仕組みづくりに回すべきだと提唱している。大いに賛同、でございます。

たとえば、ITは、仕事の進め方を早く、安く、便利に変革する性質を持っているので、これを仕事の中に適切に組み込むことは、企業にとって選択の余地のない死活問題になっている。だから、もしこの動きを無視して、ひたすら仕組みを回すルーティーンに埋没していれば、その会社は市場に淘汰されてしまう。

そういう意味で、この本は著者の主観を述べているのではなく、こうしないと個人レベルで食えなくなるし、会社レベルでも淘汰されますよという客観的事実を語っているのだと思う。「仕組み」を創造するのに80%の労力を割くのは、必然、強制ということなのだろう。
 

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通貨で読み解く世界経済  小林 正宏, 中林 伸一

通貨で読み解く世界経済―ドル、ユーロ、人民元、そして円 (中公新書)
小林 正宏 中林 伸一
中央公論新社
売り上げランキング: 2826


最近、クオリティの高い新書に出会うことが多い。本書も、そんな一冊。円安傾向は一服した感があるが、先般のG20の頃から、通貨戦争とか通貨安競争など、通貨切り下げ競争について新聞が取り上げることが多くなり、本質を理解したいと思って、数回の立ち読みの後、購入した。

マクロ経済をしっかり理解している人にとっては何てことないレベルだと思うが、少々理解の浅い自分にとっては良い頭の体操になった。副題にあるように、ドル、ユーロ、中国元、日本円を取り巻く関係国の経済状況と、外国為替市場の相互作用について、最新のトピックも含めて懇切丁寧に解説してくれている。

外為レートの影響を強く受ける企業に勤めている人、FXのファンダメンタルズ分析をしっかり理解したい人など、多くの人が本書の恩恵を受けることと思う。難解なトピックを、可能なかぎり分かりやすく、同時に正確に解説しようという著者の真摯な姿勢がうかがわれます。

 

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