月別アーカイブ: 2009年12月

みんなの意見は案外正しい  ジェームズ・スロウィッキー

「みんなの意見」は案外正しい (角川文庫)
ジェームズ・スロウィッキー
角川書店(角川グループパブリッシング)
売り上げランキング: 40958


題名に惹かれて衝動買い。期待通りの内容で満足。本書は、専門知識や豊富な経験を持った一握りのエリートの意見よりも、大衆や大きな集団が導き出す意見の方が案外正しいことが多いということを、さまざまな具体例、アカデミックな議論を引いて論じている。

大勢の人たちが、ひとつの意見を導き出すとき、そこには市場原理が働くことが多い。どんな有力な人の意見でも、そこに妥当な根拠がなければ退けられる。

逆に、何の力もない人の意見でも、意見自体に妥当性があれば注目される。そういうフルイにかけられるプロセスの中で、意見が最も妥当性のあるものに収斂されていく。だから、「みんなの意見は案外正しい」ということだ。

本書も指摘していることだが、、「みんなの意見は案外正しい」ためには、いくつか条件がある。それは、そこにキチンと市場原理が働くということだ。すべての人の意見が公平に検証されるということ、最終的に一つの意見に収斂される仕組みがあるということなど、具体的要件が挙げられている。

あと、本書では突っ込んで論じられていなかったように思うが、「みんな」というのは、最低でも20人くらいの人数が必要だということも要件として求められるだろう。4-5人では、有力者の意見になびく可能性があるから・・・。

本書の中で特に印象に残ったのは、スペースシャトルのコロンビア号のケーススタディだ。組織の上下関係の中で、事故が起きるという意見があっさり無視された過程はあまり悲しい。やはり「みんなの意見」が形成される仕組みがないと、組織がおかしい方向へ行くという典型例と言えるだろう、

以前に、チャレンジャー号のケーススタディに触れたときもショックを受けたが、やはり「みんなの意見」を収斂する仕組みのない組織は失敗を繰り返す。今のNASAがどうなっているか、具体的に分からないが反面教師の一つといえるだろう。

 

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検索にガンガンヒットさせるSEOの教科書  渡辺隆広

検索にガンガンヒットさせるSEOの教科書
渡辺 隆広
翔泳社
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もう一冊、SEOの本としてコレを読んだ。特徴は、SEOと何かという深い根本的な問題提起から、スパム的SEOとそうでないものを解き明かし、スパムの手法を具体的に列挙して、そのリスクを具体的に説明してくれていること。

SEO業者の中には、一時的に強烈な効果を示すスパム行為を薦めるところは少なくないような気がする。しかし、彼らの言いなりになっていると、ペナルティを食って急降下、ということもあるだろう。本書は、そういう注意点をとてもわかりやすく解説してくれている。

難点をあえてひとつ挙げれば、昨年出版だということ。SEOの世界で一年の時間差というのは小さくない。それでも、本書を身銭をきって買った理由は、スパムに関する説明がどの類書よりも詳しく、どこに気をつければよいか分かり易く書いてくれているからだった。

SEOとは何か、根っこのところを分かり易く説明している。いろんな人がいろんなことをワーワー言っている魑魅魍魎のSEOの世界。こういう基礎を、冷静に分かりやすく説明している本というのは貴重な存在。初心者にとっても分かりやすく、良心的な好著です。

 

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SEO 検索上位サイトの法則  八百谷真

SEO 検索上位サイトの法則
八百谷 真
ソーテック社
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仕事で立て続けにSEOの本を読んだ。何となく知っていると思っていたことが、あまり良く分かっていないことが分かって、有益だった。

本書は、解説に使う用語がスタンダードでクセがなく、すっと頭に入りやすい。多くの具体的な施策が挙げられていると同時に、それぞれの効果や有用度が星印の数で判定されており、素早く読める(星の数が少ない施策は飛ばし読みできる)。

また、本書は著者自身が上位1000URLの傾向を調査して、いろいろなデータを直接取っている点が特徴的だ。悪く言えばマクロ的視点にかけているともいえるが、ミクロ的なファクトをしっかり押さえているからウソがない。そういう意味で、出版時点で事実であることは間違いなく、参考になる。

それにしてもSEOの世界は日進月歩である。それだけに、常にcutting-edgeのトピックに触れて、どれが大事で、どれが風説に過ぎないか、自分の眼でしっかり把握しておくことが大切だ。

 

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国連の政治力学―日本はどこにいるのか  北岡伸一

国連の政治力学―日本はどこにいるのか (中公新書)
北岡 伸一
中央公論新社
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しばらく前に、民間人の方の外交官体験記を取り上げた。本作も、本職が大学教授の著者が、日本政府の国連代表部の大使を務めた外交官体験記である。

本作を読むと、いかに著者が国連におけるマルチ(多国間)外交を楽しんだかということが、とてもよく分かる。理論を長年研究してきた学者が、それに関連する実務に直接触れた喜びのようなものが伝わってくる。

著者が国連の大使を勤めた期間は、日本が安保理の常任理事国に入る運動がピークを迎えて時期とも重なっており、その舞台裏が克明に記録されている。また、北朝鮮のミサイルが発射され、国連安保理で非難決議が出たときも、著者はその決議の策定作業に直接関わった。

こうした箇所を読むと、日本政府がどのように他国と協調・牽制し合いながら、外交政策を編み上げていったということが、とてもよく分かる。また、こうした実務面の詳細のみならず、著者の本職は学者だから、様々な外交政策の背景にある日本政府の歴史観などもそれとなく披瀝されており、興味深い。

 

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