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体系的に学ぶモバイル通信   神崎洋治 西井美鷹

体系的に学ぶモバイル通信
神崎洋治 西井美鷹
日経BP社
売り上げランキング: 115019


結論を先に書くと、モバイル通信の仕組みを文字通り、基礎から実用面に至るまで、懇切丁寧に「体系的」に説明してくれており、とても分かりやすい。ちょっと詳しすぎるところもあるが、これだけモバイル通信の状況が激動している現在では、このくらい詳しいくらいが丁度よいかも知れない。携帯やスマホを買い換えるとき、パソコンを買い換えるとき、WI-FI環境を導入する時、百科事典的に使うこともできる。

自分の携帯利用歴としては、もともと十年近くauユーザーだったのだが、昨年ソフトバンクのiPhoneに乗り換えた。そこでびっくりしたのが、ソフトバンクの電波の弱さ。メールがちゃんとリアルタイムに着信しない、電話も途中で切れるなど、異常な事態が続いたのでいろいろ調べてみたのだが、iPhoneユーザーでこのような悩みを持つ人は少なくないということで、二度びっくり。

いろいろあって、3Gではなく、WI-FIベースで利用すると、多少問題が解決することに気付いたが、こうしたことをあれこれ調べる過程で出会ったのが本書。

モバイル通信の分野は、今後もどんどん変化し続けるから、自分自身が一定の基礎知識を持っておくことは、スマホやパソコンの通信環境を常に最適化しておく上で必須のことだろう。そして、そうした自分のモバイル通信環境を最適化しておけるかどうかは、仕事や遊びの可能性、ひいては非常時の対応さえも左右する結構大きな問題だという気がする。

 

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ウェブ×ソーシャル×アメリカ<全球時代>の構想力  池田純一


非常に不思議な本。ごく簡単にいえば、インターネット、ウェブサイト、ソーシャルメディアというものが、なぜ常にアメリカという国で生まれ、全世界に拡散していくのかという理由を、おもに社会学的見地から解き明かしている。ただし、この論証を行うにあたり、科学技術、歴史、政治、経済、文化など、様々な分野から論点にメスを入れているから、なかなか読み応えがある。

こうしたデジタルのメディアは、様々なデメリットも指摘されるが、情報をより速く、安く、正確に伝達できる点でアナログのメディアを凌ぐことが多いので、今後も市場原理に従って、世の中を席巻していく勢いは止まることはないだろう。

そして、こうしたデジタル・メディアは、社会の形式的な組織や仕組みを超えて、純粋な市場原理に従って希少な情報を流通させていく特質も持っているから、世の中をどんどん自由競争的なフラットな社会に組み替えていく特徴も持っている。

アメリカという国は、もともと独立の動機からして、古いヨーロッパの権威主義的、形式主義的な束縛から解き放たれたいという熱い思いから、政治も経済も徹底的に自由にすることを標榜し、今日にいたるまで民主主義と資本主義の先頭を切ってきた。こういう国から、次々とデジタルメディアが生まれるのは必然だというのが、本書の論点の一つかもしれない。

いま、こうしたデジタル・メディアは、中東の独裁国家を次々と揺さぶっている。こうしたインターネット技術を通して独裁国家が崩壊する可能性については、もともと独裁国家ソ連の出身で、グーグルの創始者であるサーゲイ・ブリンやラリー・ペイジもかなり早くから予見していた。

東西冷戦における東側諸国は、市場(おカネ)の力で次々と西側の体制に切り替わっていったが、いまやテクノロジーの力で、旧態依然とした独裁国家が次々と倒れている。

こうした動きは、自由を渇望する人間の根源的な本能に根ざした動きだから、簡単には止まらないだろう。いままで、インターネットは世の中を変えたとか、何となく言われてきたが、本当にひとつの国の体制までひっくり返してしまうほどの時代に突入した。

本書を読んで、その影響力の大きさに思いを馳せた。非常に視野の広い本で、いろいろなことを考えさせられます。

 

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キュレーションの時代   佐々木俊尚

キュレーションの時代 「つながり」の情報革命が始まる (ちくま新書)
佐々木 俊尚
筑摩書房
売り上げランキング: 139


キュレーションの派生語であるキュレーターというのは、博物館や美術館の学芸員のこと。キュレーターは、素人にはうまく理解できない展示物の意義や背景を、訪問者に分かりやすく説明し、理解させる役割を担っている。

本書は、このキュレーターのように、ネット上の膨大な情報の海の中で、価値の高い情報だけを拾い出し、分かりやすくユーザーに説明する「キュレーション」の意義が、かつてなく高まっていると説く。

つい最近まで、ネットで情報を得るには単に検索すればよかったが、ネットで商売をしている利害関係者の一部(大半?)がSEO(検索エンジン最適化)の技術を逆手にとって悪用し、価値の低い情報を上位表示させることに一定の成功をおさめたため、普通に検索しているだけでは価値の高い情報を得ることが難しくなっている。

また、もともと情報の洪水のようなネットの世界で、自分が求める情報を探し出すことは難しいこともあり、たしかにキュレーションの役割が大事になってきているのかもしれない。そういうキュレーション専門のサイトも、たしかに最近徐々に増えてきている。

ネット上の情報の流通の仕方は、単に量的な拡大だけでなく、質的拡大という特徴も現している。たとえば、ネット創生期には、情報は普通のコンテンツの形式をとって流通していたが、10年くらい前からブログやメルマガによる流通経路が隆盛を見せ、最近ではフェイスブックやツイッターのようなソーシャルメディアでの流通頻度が増えている。

この現状は、情報の消費者にとっては、ますますキュレーションを必要としていることになるし、情報の生産者(業者など)にとっては、いつどこに情報を流せばお客さんを捕まえられるか分からないという困惑を生んでいる。

そういう意味で、キュレーションの意義がますます高まっていることは事実だと思うが、キュレーションする人や企業の側にも能力の差があったり、特定の利害関係を背負っていることもあるわけで、どこまでキュレーションが社会的認知を受けられるかは現時点では未知数という感じ。

それでも、現在のネットの方向性を具体的に分かりやすく「キュレーション」した本書は必読の価値があると感じました。

 

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1億稼ぐ「検索キーワード」の見つけ方  滝井秀典

1億稼ぐ「検索キーワード」の見つけ方 (PHP文庫)
滝井 秀典
PHP研究所
売り上げランキング: 27171


仕事で自社サイトの運用に関係しているので、こういう本はよく読む。アマゾンの書評では、賛否両論割れているが、この本で指摘されているエッセンス自体は、非常に役に立つ。

サイトで商売をする場合、多くの人が検索する需要が莫大な汎用キーワード(たとえば、「ダイエット」)を、検索やキーワード広告で上位表示させたければ、費用も莫大になるので、こうしたキーワードには大手企業しか参入できない。

しかし、少ない人しか検索しなくても、それに対する需要が大きい(購入意欲が強い)具体性のあるキーワードの場合(たとえば、「白湯ダイエット」)、上位表示させても費用は少なくても済み、個人でも短期間で巨額の利益を上げることができる。

単純化すると、検索エンジンにおけるキーワードの価値というのは、大体こんな感じで決まってくるのだが、本書はこうしたキーワードの費用対効果の基本的な考え方を教えてくれる。

そして、もっと単純化して言うと、現代社会では個々のキーワードには値段が付いている。そして、そこには純利益の高いものも低いものものあるし、さらに言えば、この価格は需給関係を反映した変動相場制で決まる。本書は、こうしたポイントを易しい事例を引いて教えてくれている。

書評では、言葉遣いに品がないとか、いろいろ書かれてしまっているが、本書のエッセンスは非常に役に立つ。文庫本だから、お買い得だ。

 

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Googleの正体  牧野武文

Googleの正体 (マイコミ新書)
牧野 武文
毎日コミュニケーションズ
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グーグルに関する一番新しい本(今の時点で、たぶん)。世間の書評もおおむね好評で、確かによく調べて書かれている。とくに、創業者の二人が描く巨大な構想については、驚く人も多いだろう。

グーグルは、先進国だけでなく、開発途上国を含めた全世界へ検索市場を拡大するために、クロームOSやアンドロイドのようなOSを無償提供し、さらに無線LANの世界普及も視野に入れているという。

もしこの動きが本格化すると、途上国の多くの人々に経済的機会がひらけ、言論の自由が加速して民主化のうねりも止められなくなっていくだろう。筆者も触れている通り、こうした世界的なテクノロジーの波及を狙う背景には、創業者二人がロシアという独裁的な準途上国の出身者で、いろいろと苦労をしたという事情があるようだ。

しかし、本書の最後の方のグーグルが及ぼす悪影響(グローバリゼーションの負の側面の拡大)や、陰謀論的なお話は、書き急いだせいか、展開されるロジックに疑問を感じる箇所もある。

もしグーグルが、世界の情報を自社の利益のためだけに悪用するような「邪悪」な存在に変節したとしたら、その時点でグーグルの検索や広告から一気に人が離れ、あっという間にグーグルは市場から放逐されてしまうだろう。だから、グーグルの経営陣が、そういう自滅的な変節に傾く可能性は低いのではないだろうか。

ただし、グーグルが邪悪になる可能性が低くても、かつてのITの王者、マイクロソフトのように、その相対的存在が小さくなって弱体化する可能性はあるだろう。たとえば、グーグルよりも進んだ技術力を持ち、かつグーグルよりも巨大な構想を持った個人や企業が出現したとしたら、あっという間にグーグルが市場から消えてしまうこともあると思う。

 

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