角川書店(角川グループパブリッシング)
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題名に惹かれて衝動買い。期待通りの内容で満足。本書は、専門知識や豊富な経験を持った一握りのエリートの意見よりも、大衆や大きな集団が導き出す意見の方が案外正しいことが多いということを、さまざまな具体例、アカデミックな議論を引いて論じている。
大勢の人たちが、ひとつの意見を導き出すとき、そこには市場原理が働くことが多い。どんな有力な人の意見でも、そこに妥当な根拠がなければ退けられる。
逆に、何の力もない人の意見でも、意見自体に妥当性があれば注目される。そういうフルイにかけられるプロセスの中で、意見が最も妥当性のあるものに収斂されていく。だから、「みんなの意見は案外正しい」ということだ。
本書も指摘していることだが、、「みんなの意見は案外正しい」ためには、いくつか条件がある。それは、そこにキチンと市場原理が働くということだ。すべての人の意見が公平に検証されるということ、最終的に一つの意見に収斂される仕組みがあるということなど、具体的要件が挙げられている。
あと、本書では突っ込んで論じられていなかったように思うが、「みんな」というのは、最低でも20人くらいの人数が必要だということも要件として求められるだろう。4-5人では、有力者の意見になびく可能性があるから・・・。
本書の中で特に印象に残ったのは、スペースシャトルのコロンビア号のケーススタディだ。組織の上下関係の中で、事故が起きるという意見があっさり無視された過程はあまり悲しい。やはり「みんなの意見」が形成される仕組みがないと、組織がおかしい方向へ行くという典型例と言えるだろう、
以前に、チャレンジャー号のケーススタディに触れたときもショックを受けたが、やはり「みんなの意見」を収斂する仕組みのない組織は失敗を繰り返す。今のNASAがどうなっているか、具体的に分からないが反面教師の一つといえるだろう。