月別アーカイブ: 2010年12月

小飼弾の「仕組み」進化論  小飼弾

小飼弾の 「仕組み」進化論
小飼 弾
日本実業出版社
売り上げランキング: 3068


ライブドアの前身、オン・ザ・エッジのCTO(最高技術責任者)だった小飼弾さんの著作。

グーグルでは、従業員に労働時間の80%は既存の仕事をしてもよいが、残りの20%は既存の仕事を変革する「仕組み」作りの仕事に回せと命じている。小飼氏は、これと逆に、80%を新たな仕組みづくりに回すべきだと提唱している。大いに賛同、でございます。

たとえば、ITは、仕事の進め方を早く、安く、便利に変革する性質を持っているので、これを仕事の中に適切に組み込むことは、企業にとって選択の余地のない死活問題になっている。だから、もしこの動きを無視して、ひたすら仕組みを回すルーティーンに埋没していれば、その会社は市場に淘汰されてしまう。

そういう意味で、この本は著者の主観を述べているのではなく、こうしないと個人レベルで食えなくなるし、会社レベルでも淘汰されますよという客観的事実を語っているのだと思う。「仕組み」を創造するのに80%の労力を割くのは、必然、強制ということなのだろう。
 

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聖書に隠された性格分析 ケルビム・パターン  松島修

聖書に隠された性格分析 ケルビム・パターン
松島 修
マガジンハウス
売り上げランキング: 6717


聖書には、ケルビムという戦闘系の天使が登場する。そして、この天使は、獅子、雄牛、人、鷲という4つの資質的な側面を持っており、この4つの側面はそのまま、人の性格の類型パターンと一致しているというのが、本書の出だし部分。ここで、読む人は自分がどのパターンに当てはまるのか知りたくなり、ぐっと引き込まれる。

そして、人は誰でもこれらの類型の1つ、もしくは2つの性質を色濃く持っており、その特徴を自覚し、長所を伸ばし、短所をカバーすることによって、より幸せに生きることができるというのが、本書の核心部分。

本書が面白いのは、聖書の一部を取り出して、自分なりにアレンジしているのではなく、聖書全体の趣旨を押さえた上で、人間の性格に関する論点を抽出して論じているところ。冒頭にも、これは占いのたぐいではないということが、はっきり書かれている。つまり、本書は聖書を利用した性格分析の本ではない。聖書が、人間の性格について何を語っているか解説した本である。

人間は、自分の長所と短所を正確に把握し、長所を伸ばすだけでなく、短所にも対処していかないと、人生が生きづらくなっていく。それは、人間関係の問題を通して、私たちの日常生活に大きな影響を与え、私たちの心理状態に大きな影響を与え、私たちの人生さえも大きく変えていく。では、どうすればよいか。本書は、そんな疑問に応えてくれる。希望を与えてくれる良い本です。
 

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通貨で読み解く世界経済  小林 正宏, 中林 伸一

通貨で読み解く世界経済―ドル、ユーロ、人民元、そして円 (中公新書)
小林 正宏 中林 伸一
中央公論新社
売り上げランキング: 2826


最近、クオリティの高い新書に出会うことが多い。本書も、そんな一冊。円安傾向は一服した感があるが、先般のG20の頃から、通貨戦争とか通貨安競争など、通貨切り下げ競争について新聞が取り上げることが多くなり、本質を理解したいと思って、数回の立ち読みの後、購入した。

マクロ経済をしっかり理解している人にとっては何てことないレベルだと思うが、少々理解の浅い自分にとっては良い頭の体操になった。副題にあるように、ドル、ユーロ、中国元、日本円を取り巻く関係国の経済状況と、外国為替市場の相互作用について、最新のトピックも含めて懇切丁寧に解説してくれている。

外為レートの影響を強く受ける企業に勤めている人、FXのファンダメンタルズ分析をしっかり理解したい人など、多くの人が本書の恩恵を受けることと思う。難解なトピックを、可能なかぎり分かりやすく、同時に正確に解説しようという著者の真摯な姿勢がうかがわれます。

 

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FX取引入門  平田啓, 廣重勝彦

FX取引入門(日経文庫)
FX取引入門(日経文庫)

posted with amazlet at 10.12.04
平田 啓 廣重 勝彦
日本経済新聞出版社
売り上げランキング: 131422


新書版のFX入門書。派手な装丁の多いFX関連書籍が多い中で、極めて地味な装丁。中身も、FXはそうそう簡単に儲からないという点を力説していて、極めて堅実な内容。

しかし、FXの基本事項は全て網羅しており、FXに興味のある人は、まず最初にこれを読めば、変な情報商材や、変な他のFX関連書籍に引っかからず、手堅くFXの勉強を進め、ムダなく実践に移ることができるのではないだろうか。

本書の具体的内容としては、FXが普及した背景、外為市場の概要、取引の実際、ファンダメンタルとテクニカルの基本、FXの落とし穴、資金管理などを、幅広く、適度に深く、分かりやすく、良心的に解説している。

もちろん、この本だけでFXを理解できるわけではない。しかし、これからFXを初めてみようかと考えている人にとっては、一番最初に手に取るべき入門書かもしれない。

 

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