国連の政治力学―日本はどこにいるのか  北岡伸一

国連の政治力学―日本はどこにいるのか (中公新書)
北岡 伸一
中央公論新社
売り上げランキング: 75655


しばらく前に、民間人の方の外交官体験記を取り上げた。本作も、本職が大学教授の著者が、日本政府の国連代表部の大使を務めた外交官体験記である。

本作を読むと、いかに著者が国連におけるマルチ(多国間)外交を楽しんだかということが、とてもよく分かる。理論を長年研究してきた学者が、それに関連する実務に直接触れた喜びのようなものが伝わってくる。

著者が国連の大使を勤めた期間は、日本が安保理の常任理事国に入る運動がピークを迎えて時期とも重なっており、その舞台裏が克明に記録されている。また、北朝鮮のミサイルが発射され、国連安保理で非難決議が出たときも、著者はその決議の策定作業に直接関わった。

こうした箇所を読むと、日本政府がどのように他国と協調・牽制し合いながら、外交政策を編み上げていったということが、とてもよく分かる。また、こうした実務面の詳細のみならず、著者の本職は学者だから、様々な外交政策の背景にある日本政府の歴史観などもそれとなく披瀝されており、興味深い。

 

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日本と国連の50年―オーラルヒストリー  明石康ほか編著

日本と国連の50年―オーラルヒストリー
明石 康 野村 彰男 大芝 亮 秋山 信将 高須 幸雄
ミネルヴァ書房
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わりと地味な本だが、中身を読んで驚いた。90年代からつい最近までの国連外交の一線でリーダーシップを取ってこられた方たちのナマの声が詰まっている。明石康さん、緒方貞子さん、高須幸雄さん、小和田恒さんなど、それぞれ国連の中から(国連事務局の立場から)、国連の外から(日本政府の立場から)、近年の国連外交を仕切ってこられた方々が、貴重な本音を語っておられる。

普通の会社でも、立場や意見の違う個人、組織の考えを統合し、具体的な事業にとりまとめていくのは大変なことだ。国連では、192カ国の言語や価値観、利害が全く異なる国々の政府が、それぞれの国民の生命と財産を賭けて、紛争解決や貧困の根絶のために交渉に臨んでいる。

当然、その一線に立って政策を練り上げていこうとすれば、凄まじい「サンドバッグ」状態になる。本書は、そういう立場に身を置かれた上述のような方々が、率直な本音を語っておられる。

本書は、国連外交の中枢におられ、それに長く直接関与してきた方たちが、自らの体験を語っておられる。そういう意味で、外から国連外交を語った類書とは本質的にクオリティーが違う。一般に関心のある人だけでなく、論文とかを書いている人にとっても、大変貴重な資料になるのではないかと思います。

 

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マサチューセッツ通り2520番地  阿川尚之

マサチューセッツ通り2520番地 (講談社BIZ)
阿川 尚之
講談社
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題名は在米日本大使館の現住所、著者は作家の阿川弘之の息子、タレントの阿川佐和子のお兄さんである。 ― この阿川尚之氏、もともとは法律家(米国の弁護士)なのだが、慶応義塾大学の教授をされていたときに、乞われて在米日本大使館の公使となり、同職を約3年間務められた。本書は、その時の体験をまとめたエッセイである。

読後感がすがすがしい。正直言って、こういう優秀な人のエッセイというのは、どこかにそれとなく自慢が刷り込まれていることが多いのだが、本書にはそれが全くない。

著者は家柄も上記の通りであり、経歴もまばゆい。また公使になった経緯も、外務省の中のトップエリートともいえる幹部からのヘッドハントである。自ら望んで公使になったのではない。これだけで、この人がいかに優秀、有能か分かるのだが、本書には自慢の類が一切ない。

また、外務省、大使館などは、いかにも魑魅魍魎の世界であり、仕事をしていればムカツクことが山ほどあると思うし、民間から見れば非効率な慣行なども目に付くと思うのだが、人の悪口が書かれていない。もちろん健全な批判は見られるが、人の悪口や不健全な批判が一切ない。

そういうことで、読後感は極めて爽やか、また読んでいるときも楽しかった。大使館には、どういう人がいて、どういう仕事をしているのか、相手国とどのように関わり合っているのか、そういうことが具体的に易しく書かれており、とても読みやすかった。

 

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村上式シンプル仕事術―厳しい時代を生き抜く14の原理原則  村上憲郎

村上式シンプル仕事術―厳しい時代を生き抜く14の原理原則
村上 憲郎
ダイヤモンド社
売り上げランキング: 52228


以前、「村上式シンプル英語勉強法」の書評を書いた。これはその第2弾。

特に印象に残ったのは、簿記会計の知識と、経済学の概念をマスターしておくことの重要性を強調している点。これは、どんな仕事をするにしても、知っていて損はない、また知らないと長期的に大きな損をするポイントとして強調されている。

会社勤めの場合、簿記会計の知識は、自分の社内の立ち位置を教えてくれる(自分が会社で本当はいくら稼いでいるか等)。また、経済学の概念は、本当の意味での利益と損失を教えてもらえる(一見損だが本当は得、もしくはその逆といったことが分かる機会費用なんかの概念)。経済学のテキストとしてマンキューを推しているが、自分もマンキューで経済学を学んだので、なんか親近感が湧いた。

グーグルのような会社のトップマネジメントまで行った人の話は、理論が体験に裏付けられていて説得力がある。会社のため、社会のため、そして自分のために、どのように仕事を進め、またそのためにはどのような勉強をすればよいか、多くのヒントをいただけます。

 

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越前敏弥の日本人なら必ず誤訳する英文  越前敏弥

越前敏弥の日本人なら必ず誤訳する英文 (ディスカヴァー携書)
越前 敏弥
ディスカヴァー・トゥエンティワン
売り上げランキング: 24119


仕事で英語を使っているので、こういう本はよく買う。本書は、様々な誤訳のなかも、英語表現や語彙から生じる誤訳ではなく、文法解釈から生じる誤訳を、特に詳しく扱っている。

まず思ったのは、本書は中級者・上級者向けということ。理由は、読者が中学レベルの英文法をマスターしていることを前提にしているから。

「中学レベルの英文法」なんてバカにするなと言われてしまいそうだが、中学レベルというのは高校受験レベルのことである。高校受験する子どもの勉強を教えた経験のある大人なら知っていると思うが、これが結構難しい…。自分もさんざん習ったのだが、忘れてしまっているのだ。

しかし、中学レベルの文法をクリアしていれば、本書の内容がいかに素晴らしいかがよく分かる。本屋でも、ずっと平積みにされているが、その理由がよく分かる。たぶん、日常的に仕事で英語を使わなければならないような人にとっては、とくに重宝するだろう。

誤訳の事例も、これだと間違えてしまうだろうと思わされるようなケースばかり。また、解説の仕方も分かりやすい。横道にそれずに、必要なポイントを分かりやすく説明してくれている。新書なのだが、非常にクオリティが高い。コスト・パフォーマンスが非常に高い良書だと思います。

 

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