マサチューセッツ通り2520番地  阿川尚之

マサチューセッツ通り2520番地 (講談社BIZ)
阿川 尚之
講談社
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題名は在米日本大使館の現住所、著者は作家の阿川弘之の息子、タレントの阿川佐和子のお兄さんである。 ― この阿川尚之氏、もともとは法律家(米国の弁護士)なのだが、慶応義塾大学の教授をされていたときに、乞われて在米日本大使館の公使となり、同職を約3年間務められた。本書は、その時の体験をまとめたエッセイである。

読後感がすがすがしい。正直言って、こういう優秀な人のエッセイというのは、どこかにそれとなく自慢が刷り込まれていることが多いのだが、本書にはそれが全くない。

著者は家柄も上記の通りであり、経歴もまばゆい。また公使になった経緯も、外務省の中のトップエリートともいえる幹部からのヘッドハントである。自ら望んで公使になったのではない。これだけで、この人がいかに優秀、有能か分かるのだが、本書には自慢の類が一切ない。

また、外務省、大使館などは、いかにも魑魅魍魎の世界であり、仕事をしていればムカツクことが山ほどあると思うし、民間から見れば非効率な慣行なども目に付くと思うのだが、人の悪口が書かれていない。もちろん健全な批判は見られるが、人の悪口や不健全な批判が一切ない。

そういうことで、読後感は極めて爽やか、また読んでいるときも楽しかった。大使館には、どういう人がいて、どういう仕事をしているのか、相手国とどのように関わり合っているのか、そういうことが具体的に易しく書かれており、とても読みやすかった。

 

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