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憲法で読むアメリカ史 <上・下>  阿川尚之

 

憲法で読むアメリカ史(上) (PHP新書)
阿川 尚之
PHP研究所
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この人の著作は別のところでも取り上げたが、もともと弁護士だけあって、話が理路整然としていて、とても分かりやすい。本書は、アメリカ憲法の視点から、アメリカ発展の歴史をひも解いている。

タイトル通り、「憲法で読むアメリカ史」とも言えるが、「アメリカ憲法の歴史」といってもいい内容。新書ではあるが、学術的なクオリティの高さがあり、同時に、私のような素人でも楽しめる分りやすさを兼ね備えている。

本書を読むと、アメリカが本当に、「統合された(United)複数の国(States:州)」であることがよく分かる。連邦国家だから当たり前なのだが、それにしても州の権限が異様に強いと感じるのは私だけか。

とくに建国前後、中央政府(連邦政府)のリーダーたちは、好き勝手やろうとする州政府を相手に、アメリカという主権国家を一つにまとめるのに苦労したようだ。本書では、そのプロセスが丁寧に描かれている。

また、アメリカは今では自由の象徴のような国だが、奴隷制廃止のために大変な苦労をしたことがよく分かった。黒人を人間として見なさないという最低の次元から出発して、徐々に判例を積み上げ、憲法解釈に変更を加え、血と汗と涙、時間と労力をかけて、今のような世界で一番(たぶん)自由で平等な国が形成されたことには、少なからず心を動かされる。

憲法には万人が平等であることが当初から明記されていた。しかし同時に、全く矛盾する現実が横行し、憲法を起草し、擁護する立場の人も、その矛盾に目をつぶっていた。しかし時は流れ、今では黒人が大統領になっている。

オバマさんは今ではちょっと人気が無くなってしまったけれども、あの大統領選挙の日、大統領に就任した日の感動を忘れることはできない。本書を読んで、そんなことを思い出した。

 

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マサチューセッツ通り2520番地  阿川尚之

マサチューセッツ通り2520番地 (講談社BIZ)
阿川 尚之
講談社
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題名は在米日本大使館の現住所、著者は作家の阿川弘之の息子、タレントの阿川佐和子のお兄さんである。 ― この阿川尚之氏、もともとは法律家(米国の弁護士)なのだが、慶応義塾大学の教授をされていたときに、乞われて在米日本大使館の公使となり、同職を約3年間務められた。本書は、その時の体験をまとめたエッセイである。

読後感がすがすがしい。正直言って、こういう優秀な人のエッセイというのは、どこかにそれとなく自慢が刷り込まれていることが多いのだが、本書にはそれが全くない。

著者は家柄も上記の通りであり、経歴もまばゆい。また公使になった経緯も、外務省の中のトップエリートともいえる幹部からのヘッドハントである。自ら望んで公使になったのではない。これだけで、この人がいかに優秀、有能か分かるのだが、本書には自慢の類が一切ない。

また、外務省、大使館などは、いかにも魑魅魍魎の世界であり、仕事をしていればムカツクことが山ほどあると思うし、民間から見れば非効率な慣行なども目に付くと思うのだが、人の悪口が書かれていない。もちろん健全な批判は見られるが、人の悪口や不健全な批判が一切ない。

そういうことで、読後感は極めて爽やか、また読んでいるときも楽しかった。大使館には、どういう人がいて、どういう仕事をしているのか、相手国とどのように関わり合っているのか、そういうことが具体的に易しく書かれており、とても読みやすかった。

 

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