ウェブ×ソーシャル×アメリカ<全球時代>の構想力  池田純一


非常に不思議な本。ごく簡単にいえば、インターネット、ウェブサイト、ソーシャルメディアというものが、なぜ常にアメリカという国で生まれ、全世界に拡散していくのかという理由を、おもに社会学的見地から解き明かしている。ただし、この論証を行うにあたり、科学技術、歴史、政治、経済、文化など、様々な分野から論点にメスを入れているから、なかなか読み応えがある。

こうしたデジタルのメディアは、様々なデメリットも指摘されるが、情報をより速く、安く、正確に伝達できる点でアナログのメディアを凌ぐことが多いので、今後も市場原理に従って、世の中を席巻していく勢いは止まることはないだろう。

そして、こうしたデジタル・メディアは、社会の形式的な組織や仕組みを超えて、純粋な市場原理に従って希少な情報を流通させていく特質も持っているから、世の中をどんどん自由競争的なフラットな社会に組み替えていく特徴も持っている。

アメリカという国は、もともと独立の動機からして、古いヨーロッパの権威主義的、形式主義的な束縛から解き放たれたいという熱い思いから、政治も経済も徹底的に自由にすることを標榜し、今日にいたるまで民主主義と資本主義の先頭を切ってきた。こういう国から、次々とデジタルメディアが生まれるのは必然だというのが、本書の論点の一つかもしれない。

いま、こうしたデジタル・メディアは、中東の独裁国家を次々と揺さぶっている。こうしたインターネット技術を通して独裁国家が崩壊する可能性については、もともと独裁国家ソ連の出身で、グーグルの創始者であるサーゲイ・ブリンやラリー・ペイジもかなり早くから予見していた。

東西冷戦における東側諸国は、市場(おカネ)の力で次々と西側の体制に切り替わっていったが、いまやテクノロジーの力で、旧態依然とした独裁国家が次々と倒れている。

こうした動きは、自由を渇望する人間の根源的な本能に根ざした動きだから、簡単には止まらないだろう。いままで、インターネットは世の中を変えたとか、何となく言われてきたが、本当にひとつの国の体制までひっくり返してしまうほどの時代に突入した。

本書を読んで、その影響力の大きさに思いを馳せた。非常に視野の広い本で、いろいろなことを考えさせられます。

 

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