日別アーカイブ: 2010年11月16日

憲法で読むアメリカ史 <上・下>  阿川尚之

 

憲法で読むアメリカ史(上) (PHP新書)
阿川 尚之
PHP研究所
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この人の著作は別のところでも取り上げたが、もともと弁護士だけあって、話が理路整然としていて、とても分かりやすい。本書は、アメリカ憲法の視点から、アメリカ発展の歴史をひも解いている。

タイトル通り、「憲法で読むアメリカ史」とも言えるが、「アメリカ憲法の歴史」といってもいい内容。新書ではあるが、学術的なクオリティの高さがあり、同時に、私のような素人でも楽しめる分りやすさを兼ね備えている。

本書を読むと、アメリカが本当に、「統合された(United)複数の国(States:州)」であることがよく分かる。連邦国家だから当たり前なのだが、それにしても州の権限が異様に強いと感じるのは私だけか。

とくに建国前後、中央政府(連邦政府)のリーダーたちは、好き勝手やろうとする州政府を相手に、アメリカという主権国家を一つにまとめるのに苦労したようだ。本書では、そのプロセスが丁寧に描かれている。

また、アメリカは今では自由の象徴のような国だが、奴隷制廃止のために大変な苦労をしたことがよく分かった。黒人を人間として見なさないという最低の次元から出発して、徐々に判例を積み上げ、憲法解釈に変更を加え、血と汗と涙、時間と労力をかけて、今のような世界で一番(たぶん)自由で平等な国が形成されたことには、少なからず心を動かされる。

憲法には万人が平等であることが当初から明記されていた。しかし同時に、全く矛盾する現実が横行し、憲法を起草し、擁護する立場の人も、その矛盾に目をつぶっていた。しかし時は流れ、今では黒人が大統領になっている。

オバマさんは今ではちょっと人気が無くなってしまったけれども、あの大統領選挙の日、大統領に就任した日の感動を忘れることはできない。本書を読んで、そんなことを思い出した。

 

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