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英仏百年戦争  佐藤賢一

英仏百年戦争 (集英社新書)
佐藤 賢一
集英社
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日本という国は、民族の境界線と、国家の境界線(国境)がほぼ一致しており、しかもその状態が有史以来ずっと固定したままの非常に稀な国である。たしかに、先の大戦では朝鮮半島から中国の一部、モンゴル、東南アジアの一部までも軍事占領していたが、その広い版図を日本の領土と認めた他国は少なかったし、その期間は短期間で終わった。

しかし、世界を見渡すと、民族の境界線と国家の境界線が一致していないケースの場合のほうが多数派で、しかもその境界線は互いに流動的に変化している場合のほうが多い。

だから、本書で語られている事実は、世界の多数派の人々にとっては当たり前のことで、日本以外の国で本書が語っているポイントがネタになることもなかったように思う。しかし、多くの日本人にとって、本書で語られているポイントは、驚愕の事実以外の何物でもない。

英仏百年戦争というのは、世界史の授業では、読んで字のごとく、「イギリスとフランスが14-15世紀の百年近くにわたって戦った戦争」として教えられている。

しかし事実は、「イギリスを占領していたフランス王家と、フランスにあった別のフランス王家が戦ったフランスの王家間の戦争」であり、本書はその内実を丁寧に、かつ非常に読みやすく解き明かしている。

この背景を理解するには、11世紀に成立したノルマン朝は、現在のイギリスの領土をフランスの王家が軍事占領して打ち立てた王朝だという英仏関係の起点を押さえておく必要がある。

そして、その後のイギリス政府の公用語もしばらくの間はフランス語だったことなど、基本的にフランスがイギリスを数百年にわたって仕切っていた事実を押さえておく必要がある。

ちなみに、本書の論点と直接関係ないが、イギリス王家の先祖を今から約300年ほどさかのぼり、現在のエリザベス女王の先祖をたどると、ドイツ人の王様に行き着く。彼は英語をしゃべれないまま、今のドイツの地からイギリスへ渡り、イギリス王に就いた。

こういうことは、いまのアフリカの地域紛争などでは、頻繁に起きているようだ。だから、こういう話を頭を混乱させずに理解できる柔軟な頭脳が、現代の様々な国際紛争の背景を理解する上でも大切だ感じました。

 

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イギリス近代史講義   川北 稔

イギリス近代史講義 (講談社現代新書)
川北 稔
講談社
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産業革命を中心としたイギリス社会の変化と発展を取り扱っている。非常に興味深いのは、「イギリス近代史」を、イギリス政府による経済政策や外交政策の視点から解説しているのではなく、一般民衆の視点から解説しているところ。これに伴い、当時のイギリス社会の変化が、上から引き起こされたのではなく、下からの地殻変動によって引き起こされたことを説明している。

さらに、このロジックによって、産業革命も、様々な発明が社会発展を促したのではなく(供給側の主導)、民衆の生活の変化によって社会発展が進んだから、結果的に様々な発明が促された(需要側の主導)という、目からウロコの説明を展開している。

著者のアプローチとして、自身の見解を裏付けるために、個別の歴史的な事象を利用するのではなく、非常に細かいディテールを丁寧に積み上げて、こういう考え方しか成立しないという帰納的な論法によって、こうした「ボトムアップによる変化」という考え方を論証している。もしかしたら、歴史上の出来事のほとんどは、こうした民衆社会からの圧力で引き起こされているのかもしれないという気がした。

 

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