産業革命を中心としたイギリス社会の変化と発展を取り扱っている。非常に興味深いのは、「イギリス近代史」を、イギリス政府による経済政策や外交政策の視点から解説しているのではなく、一般民衆の視点から解説しているところ。これに伴い、当時のイギリス社会の変化が、上から引き起こされたのではなく、下からの地殻変動によって引き起こされたことを説明している。
さらに、このロジックによって、産業革命も、様々な発明が社会発展を促したのではなく(供給側の主導)、民衆の生活の変化によって社会発展が進んだから、結果的に様々な発明が促された(需要側の主導)という、目からウロコの説明を展開している。
著者のアプローチとして、自身の見解を裏付けるために、個別の歴史的な事象を利用するのではなく、非常に細かいディテールを丁寧に積み上げて、こういう考え方しか成立しないという帰納的な論法によって、こうした「ボトムアップによる変化」という考え方を論証している。もしかしたら、歴史上の出来事のほとんどは、こうした民衆社会からの圧力で引き起こされているのかもしれないという気がした。