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外国語上達法  千野栄一

外国語上達法 (岩波新書 黄版 329)
千野 栄一
岩波書店
売り上げランキング: 8570


英語の勉強は、仕事にも関係あるし、個人的に好きなことでもあるので、こういう本はまず読んでみる。とは言っても、本書は著名な言語学者による著作で、超ロングセラーでもあるので、ちょっと別格だ。

本書には、外国語を習得する上で、必要な学習、学習ツール、意外な落とし穴、絶対に必要なこと、どっちでもいいこと、やる必要のないことが、論理的に分かりやすく整理されて書かれている。

本書を読んで、自分の弱点が良く分かった。そういう意味で、とりあえず外国語を勉強しているが、壁にぶつかっている感覚があり、それがなんだか分からないという私のような人には、とくにうってつけの良書である。

 

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越前敏弥の日本人なら必ず誤訳する英文  越前敏弥

越前敏弥の日本人なら必ず誤訳する英文 (ディスカヴァー携書)
越前 敏弥
ディスカヴァー・トゥエンティワン
売り上げランキング: 24119


仕事で英語を使っているので、こういう本はよく買う。本書は、様々な誤訳のなかも、英語表現や語彙から生じる誤訳ではなく、文法解釈から生じる誤訳を、特に詳しく扱っている。

まず思ったのは、本書は中級者・上級者向けということ。理由は、読者が中学レベルの英文法をマスターしていることを前提にしているから。

「中学レベルの英文法」なんてバカにするなと言われてしまいそうだが、中学レベルというのは高校受験レベルのことである。高校受験する子どもの勉強を教えた経験のある大人なら知っていると思うが、これが結構難しい…。自分もさんざん習ったのだが、忘れてしまっているのだ。

しかし、中学レベルの文法をクリアしていれば、本書の内容がいかに素晴らしいかがよく分かる。本屋でも、ずっと平積みにされているが、その理由がよく分かる。たぶん、日常的に仕事で英語を使わなければならないような人にとっては、とくに重宝するだろう。

誤訳の事例も、これだと間違えてしまうだろうと思わされるようなケースばかり。また、解説の仕方も分かりやすい。横道にそれずに、必要なポイントを分かりやすく説明してくれている。新書なのだが、非常にクオリティが高い。コスト・パフォーマンスが非常に高い良書だと思います。

 

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続 日本人の英語  マーク・ピーターセン

続・日本人の英語 (岩波新書)
マーク ピーターセン
岩波書店
売り上げランキング: 1857


昨日に続き、続編についての所感。冠詞について、改めて丁寧に説明している。しかし、それでも、いやそれだけに冠詞は難しいと感じた。

この冠詞の問題は、著者が改めて懇切丁寧、また極めてロジカルに説明していることからも明らかな通り、著者の説明の仕方に問題があるのではない。そうではなくて、可算・不加算の区別、特定・不特定の区別が、何か普遍的なルールに基づいているのではなく、英米人の思考回路や概念把握の仕方などの「主観」に基づいているから、日本人にとって理解が難しいのだという気がする。

ここには、著者の説明が秀逸であればあるほど(実際に秀逸なのだが)、日本人が英語の冠詞を使いこなすことはとても難しいという事実が浮かび上がってくるパラドックスがある。また同時に、冠詞を間違えて用いると、文全体の意味が変わってしまったり、意味不明の内容になってしまうなど、冠詞の問題がどうでもよい形式的・専門的な問題ではなく、きわめて日常的・実践的な問題だとという点にも気づかされるので、ある意味で英語を使うのが怖くなる側面もある。

しかし同時に希望が持てるのは、著者も指摘している通り、英米人の思考回路を身に付け、英語を英語で考えながら使えるようになれば(この可能性はどの日本人にも拓かれているわけだが)、冠詞の問題は深く考えなくても自由に使いこなせるようになるので、結果的に問題は雨霧消散してしまうという点である。よく考えれば、言語というのは、それぞれの土地で土着的に生成・発展するものなので、言語習得には、その言語の思考回路で、学び、使うという姿勢が欠かせないのは当然だ。

本書では他にも、少し表現を変えるだけで、どれだけニュアンスが変わるかといったポイントを、様々な具体例を出して論じている。ここからは、こうした微妙なニュアンスの違いを理解できるかできないかで、どれほど英語理解の深度に違いが出るかということが分かり、励みになった。

こちらの続編も、繰り返し読んでみたい一冊となりました。

 

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日本人の英語  マーク・ピーターセン

日本人の英語 (岩波新書)
マーク ピーターセン
岩波書店
売り上げランキング: 299


英語学習に関する一般書として、ロングセラーにしてベストセラーの一冊。かつて出版直後に購入して読んだが、このたび仕事で必要になったので、家中を探したが見つからず、再購入してもう一度読んでみました。評価が高い理由を、改めて再認識。

とくに有用に感じたのは、冠詞の概念(可算・不加算)、関係代名詞の用法(制限・非制限用法)、前置詞の概念と用法、時制(とくに現在形と進行形の違い)などに関する説明。このへんは、英文の根幹を成すキーポイントだが、時間が経つと忘れてしまいそうなので、しばらくしてからもう一度読み直す必要を感じた。

それにしても、可算名詞と不加算名詞についての説明は、著者が極めて論理的に易しく説明してくれているのだが、どうしても理解が難しい。普遍的なルールで区別が決まっているというよりも、あくまで英米人の主観で区別が決まっている感じがして、日本人にはそのルールの根拠を理解することが、とても難しい。著者の説明は大変優れているのだが、区別の根拠を理解することが、日本人にはとても難しいのだ。

いずれにしろ、アメリカ人のネイティブが、完璧な日本語で、英語のロジックを分かりやすく説いた名著であることには違いない。なんどでも繰り返し読みたい、また読む必要がある、と感じた。

 

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村上式シンプル英語勉強法―使える英語を、本気で身につける  村上憲郎

村上式シンプル英語勉強法―使える英語を、本気で身につける
村上 憲郎
ダイヤモンド社
売り上げランキング: 2846


グーグル本社No.2にして日本法人トップによる、半ば体験記的な英語学習の手引き書です。英語学習関連の本としてだけでなく、ビジネス本としても、大変良く売れているようで、私も仕事で英語を使い、現在進行形で毎日英語を勉強している者として、思わず手に取り読んでみました。この本の論点のうち、極めて特徴的なポイントは特に以下の2点であるように思います。

1.量をこなすこと
ちまたの英語学習本を読んでいて気になるのは、量をこなすことを主張しているものが少ないことです。「量をこなす」とは、とにかく莫大な量を読み、聴くという大量のインプットを行うということです。裏を返すと、ちまたの英語学習本の中には、英語上達のコツだけを紹介して、それだけで英語が上達するかのような主張をしているものも結構あります。

実際にある程度の英語力を身に付けた方々は皆さん賛同してくれると思いますが、英語の上達には、的を得た学習法(いわゆるコツを含む)と、莫大な「量」をこなすことの両方が必要です。このどちらが欠けても、うまく行きません。その点、この村上さんの本は、コツを紹介しているとともに、冒頭でまず数十冊の原書を読むことを提唱しており、話に真実味があります。

2.一気呵成にやること
本書の中盤では、ダラダラやっていては学習効果が薄い、とにかく大量の学習ノルマを一気呵成にやることが大切だということが主張されています。誰でも苦手なことは中々手につかない、やりだしても途中で放り出してしまうということがあると思いますが、それだと最初から何もやらないのと全く同じで損です。

誰でも、勉強や仕事で、締め切り間近になると、自分でも信じられないほどの生産性が上がる体験をしたことがあると思いますが、自分にはちょっと無理だと思うくらいの学習ノルマを設定した方が、ちょうど良く、またやればできてしまうものです。

上記のほかにも、英文法を理解するコツ、スピーキングの話なども紹介されていて、なかなか有益に感じました。年配の成功者の方の体験記というと、とかくさりげない自慢話がすべり込んでいたり、どうも垢抜けないものが少なくないのですが、本書にはそういう妙なクセがないですね。本の装丁も、グーグルのポータルサイトのような清潔感のある色調で、良い感じです。

 

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